・ 機能を取るか、安定を取るか
( 執筆者 = ケビン・ビーバー氏、米アトランタにあるPrinciple Logicを経営する独立系情報セキュリティコンサルタントで、執筆、講演も手掛ける。情報セキュリティに関する7冊の著書および共著書がある )
このところ、Windowsの世界ではいろいろな動きがある。Windows Vista Service Pack 1(SP1)が公開されてから1カ月以上たち、Windows XP Service Pack 3(SP3)も2008年5月初旬に一般向けにリリースされた。
だが、そもそもこれらのサービスパックはどういう代物なのか。Windows Vista SP1にアップデートするのは正解なのか。それとも、既存のWindows XPをアップデートして、このOSをもう数年使い続ける方が得策なのか。
多くのIT部門が近いうちに方針を決めなければならない。意思決定に役立つように、これらのサービスパックに関する情報をお届けしよう。
MicrosoftはWindows Vista SP1について、信頼性、パフォーマンス、セキュリティを高める更新プログラムパッケージだとしている。
この説明とWindows Vistaのこれまでの評判から、Windows Vista SP1は大きなアップデートになると皆さんは思われるだろう。
文字通り「大きい」。Windows Vista SP1は、32ビット版で435Mバイト、わたしが導入することにした64ビット版が727Mバイトだ。このサービスパックをダウンロードするだけで、HDDの容量が足りなくなりそうだった。
Windows Vista SP1はどこが新しいのか
Windows Vista SP1では、Windowsバックアップの利用時や、リムーバブルドライブのイジェクト時のためのデータ保護機能が強化されている。
また、Windows Vistaの有線および無線トラフィック管理要素に調整が施され、802.11nのサポート、ネットワーク速度、ファイルコピー機能などが改善されているほか、ユーザーがOSの応答を待ってイライラせずに済むようにパフォーマンスも強化されている。
Windows Vista SP1は、セキュリティに関してはBitLockerを使いCドライブ以外のドライブも暗号化できるようになっているほか、SSL VPNトンネリングがサポートされ、暗号化機能の追加も行われており、多要素認証オプションも用意されている。
さらに、Windows VistaネイティブのNetwork Access Protection(NAP)機能も管理機能が強化されている。これは、Network Access Control(NAC)に対するMicrosoftの回答といえる機能だ。
NACは、ユーザー定義のポリシーに基づいて、「健全な」コンピュータのみにネットワークアクセスを許可するものだ。
全体的に、Windows Vista SP1ではかなりの変更と改良が加えられており、明らかにこれらはMicrosoftが入念に吟味したものだ。
Windows XP SP3──基本的にはパッチ集だが重要な新機能も
Windows XP SP3にアップデートしても、システムのパフォーマンスや安定性、信頼性は従来並みだろう。
Windows XP SP3には、2004年のWindows XP SP2のリリース(リリース間隔がこんなに空いていたとは驚きだ)以降に公開されたすべてのパッチとホットフィックスが含まれている。
このように、Windows XP SP3に含まれる修正プログラムには、Windows Updateでしばらく前から配布されてきたものもあるが、Windows XP SP3で初めて提供されるものもある。
いずれにしても、膨大な修正プログラムを1つ1つインストールしていくより、1つのサービスパックで一気に導入する方が断然いいのは間違いない。
ただし、Windows XP SP3をインストールするには、Windows XP SP1を稼働させていなければならない。
しかし、Windows XP SP3は、これまでのアップデートをまとめて行うためだけのものではない。
Windows XP SP3には、今までWindows Vistaでしか利用できなかった新しい機能も盛り込まれている。
例えば、Windows XP SP3ではNAPがサポートされている。
これは、Windows Server 2008への移行の障害を解消するのに役立てようという狙いではないかと思われる。
NAPが定着すれば、管理者がセキュリティの標準化やポリシー強制を進める上で大いにプラスになり、社内セキュリティ評価で発見される脆弱性の数も減少するだろう(napは「居眠り」などの意味なので、ジョークが生まれるのも楽しみだ)。
また、Windows XP SP3ではWi-Fi機能もアップデートされ、待望されていたWPA2のサポートが追加された。
これにより、Wi-Fiハッキングが怖い時代は過去のものになるかもしれない。
さらに、Windows XP SP3ではWindowsのセキュリティ設定に関する充実したドキュメントが用意されており、利用できるネットワークノウハウが限られている企業にとって有益だ。
またMicrosoftは、パケットをひそかに捨てているルータ(「ブラックホールルーティング」と呼ばれるセキュリティ対策に使われているルータ)を検知できる新機能を宣伝している。
なぜこれが大きなセールスポイントなのかは分からないが、とにかくこの機能が必要な場合でも問題ないということだ。
さらに、Internet Explorer(IE)7へのアップグレードを強制される心配もない。
Windows XP SP3は、IE 6とIE 7のどちらがインストールされているかを認識し、該当するマイナーアップデートを施す。
また、この枯れたOSは2014年までサポートされる。随分先に思えるが、あっという間なのだろう。
Windows XP SP3かWindows Vista SP1か
率直に言おう。わたしはWindows Vistaが提供するユーザー体験に強い魅力を感じている。
しかし、これまで経験し、Windows Vista SP1をインストールしてからも経験するであろうトラブルを考えると、過去のアップデートがすべて反映された最新のWindows XPを提供してくれるWindows XP SP3は、やはり素晴らしいと思う。
Windows Vistaにアップグレードする差し迫った理由はわたしには見当たらない。
企業ユースではなおさらだ(どうしてもアップグレードしなければならない状況にあるなら話は別だが)。
わたしも含めて多くの人が、Windows Vistaで安定性やパフォーマンスの問題にぶつかっただけでなく、サードパーティーソフトウェアのライセンスをアップグレードすることも余儀なくされた。
一部のビジネスアプリケーションを最新の状態にしてWindows Vistaに対応させるためだった。
わたしの場合はVMwareとAdobe Acrobatをアップグレードしなければならなかった。
これらのソフトウェアは、わたしのような個人事業者には安いものではないが、それでも、そのコストは管理可能な範囲だ。
しかし、企業では、デスクトップごとに幾つものライセンスをアップグレードしなければならない。相当な出費を迫られることになる。
Windows XP SP3のおかげで、わたしは踏ん切りがついた気がする。そのうちにWindowsをダウングレードすることになるだろう。Windows XP万歳。
*-*